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沖縄・南大東島研修会報告

実施報告
実施日 2012年1月27日(金)~30日(月)

 この蔵元研修会の初回に訪問した沖縄で、蔵元の地下蔵に預けた泡盛が5年目を迎えて古酒となる今年、再び沖縄への訪問が決まっていた。そこへ会長の「南大東島へ行ってみたい。」のひと言で今回の企画がはじまった。2006年の第5回大選集から毎年横浜へ来てくれているグレイスラムさんのところへぜひ行ってみたい。金城社長の都合が合うことを皆で願った。南大東島へは那覇から飛ぶので日程を一日追加して、28日~30日が沖縄本島基本コース、南大東島へは一日前乗りして27日出発となった。全参加人員18名。今回も研修会の一切を企画調整してくれたのは(株)DMC沖縄の徳田さんだ。

一日目(1月27日)
□一路 南大東島へ
沖縄那覇空港から南大東島行きは10:10発。これに乗るには羽田6:20発。自宅を4時過ぎに出発した。那覇空港から南大東島まではRAC琉球エアコミューターの37人乗りのかわいいプロペラ機だ。尾翼にはシーサーが描かれている。
南大東島は沖縄本島の東約370㎞に浮かぶ、沖縄諸島の中では6番目に大きな島。とはいえ、面積30.57㎢、周囲21.2㎞、標高75m、直径約6㎞。サンゴ礁が隆起してできた隆起環礁の島で、周囲は断崖絶壁で、沖へ2㎞ほどでれば水深は1,000mにも達する。
1900年 八丈島からの開拓団により、大東諸島の開拓が開始され、戦前は製糖業を営む企業が島全体を所有していた。1972年 沖縄返還に伴い日本領に復帰したという歴史がある。八丈島の開拓団の方々なので、沖縄方言とは全く違う。

□さとうきび 収穫体験
写真はさとうきび収穫機械の外国製大型ハーベスタ。島内を周遊したところどこまで行ってもさとうきび畑が続いていて、ハーベスタと2台のトラックが一組で入れ替わり連続で広大な畑で収穫していた。現在は収穫作業のほとんどが機械式だが、私たち一行は敢えて手作業の収穫体験に挑戦してみた。斧か鎌を使って背丈以上に伸びたさとうきびの根本に斜めに振り下ろす。茎の周りの枝をはらって一丁上がり! 書くと簡単そうだが実際にやってみるとなかなか。コツを掴めないうちに次の予定となった。

□星野洞
珊瑚礁が隆起してできた南大東島は、ほとんどが石灰岩でできており、島じゅうあちこちに鍾乳洞がある。その中で、星野洞は約千坪の空間に、カーテン状のもの、つらら形、様々なパターンの鍾乳石があり、鍾乳洞の中の静けさも手伝って、その美しさと幻想的な眺めに感動した。まさかこの島の地下40mにこんな世界が広がっていたなんて!
1988年ふるさと創生事業の1億円で内部の通路が整備され観光化されるまで、なかなか一般の目に触れることはなかった。鍾乳石の成長は100年に

□島の名物:大東寿司と大東そばセット
マグロやさわらの醤油漬けを握った寿司で結構うまい。大東寿司は八丈島の「島寿司」の流れをくむ食文化であり、八丈島からの開拓団による開拓とともに持ち込まれた経緯がある。
大東そばの歯ごたえのある太麺は、がじゅまるなどの木の灰汁と南大東の海水を使った昔ながらの手作り。このコシのある麺とあっさりしたかつおベースのスープが絶妙で、飽きのこない優しい味だった。

■大東ラム酒研修その1.「グレイスラム」
大選集ではお馴染みの「COR COR」。 サトウキビを原料とするラム酒だが原料によってふたつに分かれている。サトウキビの搾り汁を原料とする「アグリコール」と製糖工場で砂糖(ざらめ)を精製する際に副産物として産出される「糖蜜」を発酵させて作る「アンデュストリエル」。グレイスラムでは、「COR CORアグリコール」(緑ラベル)と「COR COR」(赤ラベル)でどちらも商品化。世界でもこのラムアグリコールを製造している国やメーカーは非常に少なく、希少性の高い商品とされている。グレイスラムの商品は、無添加・無着色仕上げで更に希少性アップです。今回グレイスラムには、直前までフランスのメディア取材がはいっているそうで、本場から認められているからこそですね。金城祐子社長と島の方々が熱く協働してできあがったグレイスラムの「COR COR」。皆様もぜひご堪能を。
社屋は旧南大東空港の建物をそのまま使用していて、記念に看板もそのまま残してある。この場所は島のど真ん中にあり、CORCORのラベルのデザインをよく見ると南大東島とその中心をアクセントにしてデザインされている。商品の名前は CORAL CORONA から「COR COR」と名付けたそうだ。

二日目(1月28日)
南大東島を堪能した集団と今朝羽田を出発した集団が那覇空港で合流。
■沖縄泡盛研修その2. 「忠孝酒造」
「泡盛文化の継承と創造」への具現化に力を注いでいる二代目蔵元 大城繁(現会長)の古酒造りへの想いから生まれた「忠孝南蛮荒焼甕」。自社で窯を有し土造りから焼成までおこなう「甕造り」は泡盛メーカーとしては初めてのことであり、古酒の熟成に最適な容器となった。甕の写真は左から土を練った物。乾燥した状態。焼き上がり焼き締めの状態。練った甕がこれほどまでに小さくなって焼き締められることによって泡盛が漏れない甕となる。
もちろん中身の泡盛の研究も積極的に行っており、古式泡盛の製法である「シー汁浸漬法」の解明と復活に取り組んだ業績が認められ、泡盛業界初となる社員の醸造学博士号取得や、沖縄県産マンゴーから採取した新酵母を活用した香味豊かな泡盛「忠孝原酒」も開発した。 ちょうど1年前に「く~すの杜忠孝蔵」オープン。ガラスの向こうでは小規模の泡盛製造工程が見ることができ、実際に製造体験もできるように設備されている。地下には古酒蔵もあり、泡盛の伝統と文化が肌で感じ取れる。また別棟の貯蔵施設は木造建築としては首里城に次ぐスケール。一升瓶換算で2万5千本貯蔵のタンクが18本、合計45万本分の古酒と、5升甕、一斗甕が合計約800個が並んでいて、泡盛に包まれる感覚…を味わった。

□「琉球泡盛倶楽部」との交流会 (あしびうなぁ)
大選集にも来ていただいた「長嶺哲成」さんが代表をされている「琉球泡盛倶楽部」は、泡盛マイスターを中心に研究熱心な活動をされている。今回の「泡盛研修会」の泡盛談義にぜひとお願いしたところ6名の会員とともに参加してくれた。泡盛に関する豊富な経験と知識、また泡盛に掛ける熱い思いに刺激を受けた。会場は、前回好評だった首里「あしびうなぁ」。
長嶺哲成さんは、1962年、那覇市生まれ。沖縄の週刊新聞『レキオ』、泡盛を核にした沖縄情報誌『カラカラ』の編集長を務め、その後フリーに。2004年、泡盛好きが高じて“くーすBAR「カラカラとちぶぐゎ~」をオープン。泡盛を媒介に、地元の人と観光客が集い交流する場所になっている。現在、執筆活動と居酒屋のおやじと、二束のわらじで奮闘中。

三日目(1月29日)
■沖縄泡盛研修その3. 「津嘉山(つかやま)酒造所」
1924年ごろ現在の名護市(旧国頭郡名護町)で創業し、沖縄本島北部で初めて泡盛の製造免許を取得した歴史ある酒造所。1982年より一時休業を余儀なくされていたが1991年に醸造を再開し、小規模ながらも手作りにこだわった製法と名護の名水で醸される良酒を復活させた。「國華」(こっか)一種を大切に作られている。「國華」の名は、操業当時名護以北には酒造所がなく、また名護は緋寒さくらの名所であることから、国頭(くにがみ:沖縄北部のこと)の泡盛の華としたい意味を込められた。酒造所建物は1927〜1929年に建設され沖縄県内の酒造所の中で唯一戦火を免れたもので、終戦後は一時期進駐軍の司令部として使われていた。現存する赤瓦の木造建造物としては最大級規模といわれ、2006年登録有形文化財に、2009年に国の重要文化財に指定された。すでに改修工事の準備が始まっていてもうすぐ見学することもできなくなる。絶妙のタイミングに訪問することができた。

■沖縄泡盛研修その4. 「山川酒造」
「どんな時でもとにかく頑張って古酒=クースを寝かせておきなさい。いずれは古酒の時代になるから」という創業者山川宗道氏の教えを頑なに守り、100%古酒にこだわっている。創業以来、3代に渡って泡盛の貯蔵を引き継いできた山川酒造では、年数が表示してある泡盛は、全て100%、年数表示以上の古酒というこだわりをもっている。例えば、10年古酒と8年古酒をブレンドした場合、さらに2年寝かせてから10年古酒として売り出す、という徹底した管理を行っていて、ファンの間で「古酒のやまかわ」と呼ばれ親しまれている。
2011年12月1日「限定秘蔵酒かねやま40年貯蔵」(41度)を売り出されたが、この年数の古酒を出せるのは、山川酒造ならでは。ちなみに40年前沖縄は日本に復帰した。それまでの歴史を、それからの歴史を考えると感慨深いものがある。また、本部町・八重岳の豊かな自然に恵まれた満名川のほとりにあるこちらの酒造所では、「酒は水が命」と考え、山から湧き出る豊富な清水を用いて酒を仕込んでいる。

□「旧正月準全島闘牛大会」うるま市にて
年2回の大規模な闘牛大会が開催されているとの情報を聞きつけて、予定していた「美ら海水族館見学」を変更して「闘牛」を見物した。闘牛界のチャンピオン牛や人気牛などが出場する恒例のビックイベントだけあって2000人余の観客が詰めかけていた。この地方では闘牛が盛んで観客には土地のおばぁや小さい子どもを連れた家族連れの姿も見受けられた。体重1トン前後の牛が力の限り激しい押し合いを展開し、押し込まれて柵際に押し込まれた牛が満身の力を込めて押し返す場面では観客からどよめきが起こり、闘牛の醍醐味を堪能した。

■沖縄泡盛研修その5. 「神村酒造」
今回は「夜の酒造所見学」…。大人の遊びの香りがムンムンしていますね。「夜作られるのは歴史ではなく酒なのだ!」とか。照明に工夫を凝らした妖しげな夜の酒造蔵では熟成の一瞬を共にできた喜びのひとときを過ごした。
創業は1882年、一世紀以上の歴史を誇る老舗の酒造所として、1999年に那覇市からうるま市石川へ酒造所を移設し今に至る。神村酒造の酒造りは老麹造り・常圧蒸留・原酒造り(45度超)・樽貯蔵にこだわり、伝統の製法を継承しつつ新たな技術に果敢に挑戦してきた歴史を持つ。そのひとつにウヰスキー製法がヒントとなり10年の研究を重ね誕生した樽貯蔵の先駆け「暖流」があり、泡盛界において新境地を開いた。最近リバイバルのハイボールに引っ掛けて「暖流」を炭酸で割った飲み物の名は「ダンボール」だとか。沖縄では静かなブームとなっている。
横浜大選集にも毎度お馴染みの神村酒造さんですが、5年前にも訪問した時に地下貯蔵酒蔵に預けた泡盛が時を経た古酒を開栓して味わおうというのが今回の大きな目的。 
「5年物」をじっくりと味わった。



□三板(サンバ)実技講習
沖縄の三板は、三枚の小さな板切れを紐で結んだだけのカスタネットの板を3枚にしたような形をしている軽打楽器だ。左手の指に挟んで持ち、民謡や音楽のリズムに合わせて両の手、5指を用いて打ち鳴らす。三線の棹の余り木の黒木(黒檀)、あるいはチャーギ(イヌマキ)などの堅い木を用いて作られる。
今回、沖縄三板協会の玉城千春講師の指導により三板の実技講習が行われた。皆はじめてで三板の持ち方から教わったが、分かり易い指導のお陰で打ち方にもすぐに慣れ、沖縄民謡と玉城講師の三線に合わせて三板のリズムと踊りが賑やかに始まった。


三日目(1月30日 最終日)
■沖縄泡盛研修その6. 「瑞穂酒造」
1848年、琉球国王尚泰王即位の年に古都首里の地に誕生した歴史ある酒造所。1969年に首里末吉町へ移転し新工場と地下貯蔵庫を建設。ある日先代が「天から龍が舞い降りて地下蔵の酒を飲み干していった」夢を見て、地下貯蔵庫を「天龍蔵」と名付けたという。
琉球王朝時代から脈々と流れる泡盛造りの知識と技術は現在の杜氏に受け継がれ、米と酵母と麹の三要素の個性を見極めながら酒造りを進めている。現在は県外出荷額が約4割を占めている。
2011年10月からは泡盛古酒のオーナー制度「古酒銀行」をスタート。泡盛独特の「仕次(しつぎ)」を自動化した「全自動古酒熟成器」を5基設置して、7年熟成古酒3,600リットルを貯蔵。年に1回、古酒90リットルを取り出しオーナーに届けるという。

■沖縄泡盛研修その7. 「宮里酒造所」
戦後間もない1946年、那覇市の南部小禄の地に創業した酒造所です。約20年間小売をせず同業者や酒造協同組合への桶売りを専門に行っていた時期があり幻の酒と呼ばれていたが、1997年に再び一般市場によみがえり話題になった。現在の代表・宮里徹氏は蔵に入った当初から先代が勘と経験で培ってきた酒造りを一日も早く習得すべく製造工程のあらゆるデータを記録し、独自の研究を重ねてきた。新酒でも確実に1年以上寝かせ、手作業で細やかに貯蔵管理を行うなど、生産量より酒質にこだわる姿勢を崩していない。
また、製造した泡盛を数年寝かせる熟成とその飲み方や味わい方にもこだわりを持たれ、当委員会を代表した2名が宮里氏より味わい方を伝授された。グラスに注いでからの空気の触れ具合やグラスを握った手から伝わる温度変化によって、泡盛の味わいが変わることなどたいへん興味深かった。


★まとめに
南大東島蔵元訪問1蔵。沖縄泡盛蔵元訪問6蔵。琉球泡盛倶楽部との交流会。
この研修会に参加しない限りきっと行く機会がない南大東島へ行くことができ、一面のさとうきび畑と珊瑚の絶壁と洞窟など、想像していた以上の別世界を垣間見ることができた。
2回目の訪問となる沖縄では二度目の蔵元さんでも前回とは違った側面を楽しむことができ、また今回は北部の本部・名護の蔵元さんへも訪問したので沖縄のゆったりした風景とお人柄にも触れることができた。
また今回もますます沖縄および泡盛ファンになったことと、これから泡盛の飲み方は特に古酒についてはじっくりゆっくり飲むことにする決意を報告します。

最後に、今回の研修会に快くご協力くださった金城さんと沖縄の蔵元さん、そして琉球泡盛倶楽部の皆さん、大変お世話になりました。また、多くの方から現地の情報をご提供頂いたお陰で実に充実した研修会となりました。あらためて皆様に感謝して沖縄・南大東島研修会のご報告と致します。


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